ひだ・みの 活断層を訪ねて50  ホーム 目次

牧ヶ洞断層B ずれた方向示す条線


はがし取った断層粘土面=高山市清見町牧ヶ洞
 
 岐阜県は、二〇〇〇〜〇一(平成十二〜十三)年に清見町大倉滝の上流で牧ヶ洞断層の発掘調査を行なった。調査では、牧ヶ洞断層が動いた最新の時期を、断層活動によって切られた地層の年代測定などから約四千七百年前以後と推定した。
 二〇〇四(平成十六)年十二月、飛騨地学研究会は、清見町牧ヶ洞の岐阜県畜産研究所近くの洪水調整池のり面で、牧ヶ洞断層の露頭(断層断面が見える部分)を発見した。数日後、ここを管理する高山国道工事事務所にお願いし詳しく調査させていただいた。
 露頭の最下部(基盤)の岩石は周辺に広く分布する濃飛流紋岩類で、それを覆って砂礫層が堆積していた。基盤岩の内部には、いくつかの断層が見られ、そのうちの一本の断層は、砂礫層にも食い違いを生じさせていた。
 砂礫層は、地表面を含む川の土砂であるので、最近(数万年前以降)堆積したものだ。その砂礫層が断層で切れていれば、断層は砂礫層堆積後、数万年前以降に活動したといえる。つまりこれは、地質の時間でいえば最近活動した断層と思われた。
 この断層面を慎重に掘り出したところ、基盤岩の一部が断層運動によって滑らかに磨かれた面が表れた。このような断層面を「断層鏡肌(だんそうかがみはだ)」という。さらにこの断層鏡肌やそれに接していた粘土面上からは、断層運動によって生じた幾本かの筋状模様が観察された(写真)。
 この筋状模様は「条線」と呼ばれ、断層面がこすれた跡である。条線は、断層のずれ動いた方向を正確に知る貴重なデータとなる。今回見つかった条線の向きから、牧ヶ洞断層の最近のずれの運動が分かった。条線によると、断層運動は、垂直ずれよりも横ずれの成分が大きい。主に右横ずれ(断層の向こうが右にずれる)で、南東側の地盤がわずかに(水平から角度九度程度)ずれ上がる運動をした。南東側の小山の列は、この運動の累積で上昇したものだ。
(寺門隆治・飛騨地学研究会会員)2005年10月1日