牧ヶ洞断層A 調整池の壁面に露頭 |
飛騨地学研究会では、二〇〇四(平成十六)年十二月、旧清見村牧ヶ洞、岐阜県畜産研究所近くで断層調査を行った。その時、後から参加した寺門さんが、「どうも断層らしい露頭(地層などが地表で見える所)がある」と伝えてきた。さっそく皆でその場所へ行って驚いた。断層による岩盤のずれが見事に現れていたのである。 この露頭は、中部縦貫道の建設で造られた洪水調整池の上流側の壁面にあった。谷川に直交する断面が、工事による表土のはぎ取りで長さ五〇bほど現れた。断面が牧ヶ洞断層を横切っていたのだ。 この地は、小さな谷で岩盤の上に砂や礫(れき)が残っている。その砂礫層は、河川の土砂が堆積した地層である。写真では、座っている男の子から右下に向かって線状に断層の境がある。その境の右側が上昇し左側が下降した。つまり、元は水平につながっていた砂礫層が、その後の断層活動により上下にずれている。この場所での垂直方向のずれは、みかけで約五bだった。 写真の右端に茶色や灰色、やや白っぽい部分が見られるだろう。ここを観察すると、岩盤の破壊により粘土や小破片ができて色が異なっている。ここも断層の境である。ところが、これら灰色・白っぽい部分の上にある砂礫層は、断層を境に上下にずれていない。これは、何を意味しているのだろうか。 つまり、右の断層の活動後、侵食で地形がいったん平になり、その上に砂礫層が堆積したと考えたらどうだろうか。右の断層は、古い断層だったのである。それに対し、男の子のいる断層は、砂礫層をずらせており、砂礫層堆積後の新しい断層である。時間順に並べると、@古い断層の活動、A古い断層の上面の侵食(平な地形)、B砂礫層の堆積、C新しい断層の活動(砂礫層のずれ)となる。 このように、地震のたびに断層が動く場所は同じとは限らず、複数の部分がずれて幅広い断層破砕帯(岩石が砕けたり粘土になる地帯)を形成していった。この写真は、そのことを見事に表している。 (岩田修・飛騨地学研究会副会長)2005年9月24日 |