ひだ地学第87号 2001年7月12日発行   ホーム 目次

神岡町山之村の手取層化石

巡検日:2001年7月1日

神岡町山之村打保で化石を捜す会員達 

  7月1日(日)、前日の雨もあがり晴天となりました。以下の5名で神岡町山之村で巡検を行いました。メンバーは、小坂光三、舩坂忠夫、木下耕一、三宅幸雄、中田裕一でした。同行予定だった生物の先生は、前日の大雨で生物調査を中止にしたので同行いただけませんでした。また、出席予定の岩田先生も都合が悪くなり欠席でした。
 そこで、三宅さんもいることだし、山之村の手取層の化石を捜してみることにしました。三宅さんは山之村で化石を捜したことがないそうだし、他のメンバーも10年以上前に捜したきりです。神岡から双六谷の大規模林道山吹峠に入りました。大規模林道は2車線の快適な舗装道路です。沿道に白い花の咲く木が植えてありました。小坂先生によるとヤマボウシといいます。山吹峠から山之村の入り口までは船津型花崗岩、岩井谷まで行くと泥岩や砂岩の手取層になりました。
 山之村は、高原の別天地です。このころまで曇り空でしたが、だんだん晴れて暑くなりました。小坂先生から前に打保で化石を見つけたと聞いて、打保の林道に入って見ました。そこにはホタルブクロのピンクの花が咲いていました。林道で崖から落ちてきた石を拾って見ると、植物化石を発見できました。三宅さんに聞くと手取層特有の化石、ポドザミテス・ランセオラーツスです。
 この後、大規模林道の飛越トンネル付近まで行って昼食をとることにしました。舩坂先生によると、大規模林道の工事中に何度も化石捜しに来たが発見できなかったとのこと。あまり期待はしていませんでしたが、小さな谷に降りて石を見るとなんと化石があるではありませんか。葉脈がよくわかるポドザミテス・ランセオラーツスの化石を拾えました。またシダの仲間の、オニキオプシス・エロンガータという舌を噛みそうな名の化石も見つかりました。小坂先生によるとここで化石を拾ったという話はないそうです。
 手取層は、あのキョウリュウの化石が出ることで有名な地層です。その範囲は、ご存知のように西は福井県の手取川付近から東はこの岐阜県の山之村付近に分布します。含まれる化石から、中生代ジュラ紀中期〜白亜紀中期頃(1億5千万年前〜1億2千万年前)にかけて湖や内湾に堆積した地層です。そういえば、黒部五郎岳の山頂にも手取層がありました。2,840mの高さまで隆起していて、わかってはいても不思議な感じでした。
 飛越トンネルの向こうに行きました。その先は富山県有峰湖ですが、有料道路の料金所(1金1,800円也)があったのでユーターンしてもどり、涼しそうな谷で昼食にしました。そこでは、高山市から来たという人がウドを取っていて、「ヤマはいいなあ。」と言ったあと、大きなイワナを釣り落とした自慢話を楽しそうにしました。そしてこちらが、化石を採集していることを知って不思議そうにしていました。よっぽと、ひま人に思えたのでしょう。
 この谷も含め、近くの富山県側の谷に化石はありませんでした。というわけで、新しい化石産地も発見できて充実した巡検となりました。