飛騨の朝霧と放射霧・盆地霧 |
猪臥山(約1500m)山頂より。霧海の向こ
うは白山。よく見ると霧海にブロッケンが現れている。
なぜ飛騨の盆地には朝霧が発生しやすいのでしょうか。一つには、盆地という地形が原因です。盆地は周囲を山に囲まれていて風が弱い傾向です。また晴天時の夜間は、放射冷却が強まります。その結果、周囲の山から冷気が降りてきて盆地に溜まります。これを冷気湖といいます。すると大気中の水蒸気が飽和に達して、水滴すなわち霧粒となり霧が発生します。このようなメカニズムで発生する霧を放射霧といいます。一方、盆地に発生しやすいということで、この朝霧は盆地霧ともいいます。 年間を通して、風の強さ・気温の日較差(最高気温と最低気温の差)・湿度の変化と霧発生の関係を調べたところ、@風が弱い A気温の日較差が大きい B湿度が高いという条件が揃いやすい時期(8月から12月)にかけて、霧が多く発生することがわかりました。 ただし、『低い霧』は秋から初冬の移動性高気圧に覆われた時に発生しやすいといえます。また、『高い霧』は夏の太平洋高気圧あるいは秋の移動性高気圧に覆われたときに多く発生する傾向があります。いずれも高気圧と霧は深い関係にあり、朝霧は晴天の印です。現在、『低い霧』と『高い霧』の発生メカニズムの違いを明らかにするべく観測・研究を継続しています。(下畑 五夫) |