吉城郡上宝村  ホーム 目次

播隆上人も見た笠ヶ岳の御来迎

笠ヶ岳山頂から見た御来迎 

 笠ヶ岳(標高2898m)は、岐阜県のすべての山の中で他県と山頂を共有しない最高峰です。新田次郎の「槍ヶ岳開山」で有名な播隆上人が笠ヶ岳に登ったのは、文政6(1823)年6月のことでした。そして同年8月、播隆上人一行は、再び山頂に立ちました。このとき御来迎が雲の中に浮かび阿弥陀仏が3度出現したので、一同歓喜の涙をこぼしたといいます。そして真正面に見える槍ヶ岳を望んで、上人は槍への登頂を祈願しました。
 それから、200年近くたった2000年8月に、笠ヶ岳に登るとこの写真の御来迎に出会うことができました。御来迎は登山者の間ではブロッケン、あるいはブロッケンの妖怪といわれています。ドイツのブロッケン山でこの現象がよく見えることから名づけられました。ブロッケンは、観察者が太陽をを背にして前面に雲のスクリーンがあると、影が映し出される現象です。光が雲の微小水滴に回折して、影のまわりに虹のような輪ができます。昔の人が阿弥陀仏だと思ったのも無理もありません。
 ブロッケンを観察するためには、背に太陽、前面にはガス(霧、雲)が必要です。つまり、稜線や山頂を境にして、太陽の反対側の斜面に上昇気流(雲)があるときブロッケンを観察できます。朝、ブロッケンが観察できるときは、太陽が東にあり、ブロッケンは西方に現れます。夕方はこの逆になります。(中田 裕一)