神岡町は飛騨北東端に位置し、冬の積雪が多い町です。神岡城・鉱山資料館のある丘に立つと、高原川沿いのせまい谷底に神岡の町が広がっています。その家並みの屋根はどの家もトタン屋根です。
神岡町在住の人から次の話を聞きました。「公民館の屋根を瓦にしたところ、冬、屋根に積もった雪が昼の間に溶けて瓦の隙間に入り、瓦が割れてしまった。やはりトタン屋根でないとだめだ」水は朝の低温で凍ると膨張するので、瓦の隙間を広げて割ってしまうようです。
さらに雪が多いため、神岡は屋根の雪降ろしが大変な地域です。たとえば、飛騨中部の高山市で1回雪降ろしをする間に神岡では3回くらい雪降ろしが必要です。屋根の雪の重みを考えると、屋根が軽いトタンのほうが安心です。
神岡を中心としたトタン屋根地域は、北は富山県境までです。富山県では瓦屋根の家屋になります。富山県は、標高が低いため神岡ほど低温になりません。また雪が降ってもすぐ溶けてしまいます。これに加え、海に近iい場所では潮風でトタン屋根は錆びやすいですから、瓦屋根が選択されたのではないかと思います。
トタン屋根地域の南限は、高山市の南方、大野郡宮村のあたりまでです。ただし、南になるにつれて瓦屋根の家も混ざってきます。分水嶺から南、南飛騨は、冬は雪が少なく夏が比較的暑い(トタン屋根の家屋の2階は猛烈な暑さになる)ため、瓦屋根の地域になりました。もちろんその南、美濃の平野部は瓦屋根地域です。(中田 裕一)
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