白山温泉(大白川温泉) |
かつての白山温泉
大白川温泉は、『斐太後風土記』によると、かつては白山温泉あるいは白山三温泉と呼ばれていたようです。しかし、明治44年に発行された岡村利平著『飛騨山川』には、「【大白川温泉】(大野郡白川村大字平瀬字地獄谷)白山東面の中腹地獄谷にあり、塩類泉にて温度132度を有す。」とあり、明治の初めから、およそ40年の年月を重ねるうちにどこかで名称が変わったのでしょう。その経緯は今のところ調べがついていません。 ところで高山陣屋の役人山崎弘泰が、天保10年の夏、平瀬から白山温泉を経て白山へ登山をした時の紀行文『山分衣』があります。この中に白山温泉の様子が次のように書かれています。 「ここには温泉があり一夜の宿とする。まれに里人が湯浴みにやってくるが、大層粗末な苫葺きの小屋があるだけである。悪くすると頭を打つし、所狭く心地よいところではない。温泉に浸かるために、河原で石を抜き、川水をせき止めたりして湯船を作った。入っているうちにきれいになり、大層心地よくなって二度三度湯浴みをした。・・・・」 当時でもまさに秘湯中の秘湯です。この温泉は、昭和38年大白川ダム(白水湖)に水没するまであまり姿を変えることなく、里人や登山客に利用されていたといいます。 現在は、白水湖畔から新たに温泉が湧出し、大白川温泉として人々に安らぎを与えています。(下畑五夫) |