日面(ひおも)と日影(ひかげ) |
国道158号線沿いの日面の地名板
大野郡丹生川村には、高山市から国道158号線が東西に伸びています。ここに、日面(ひおも)と日影という地名があります。同じ地名は国府町宮地にもあり、他に中部地方を中心に全国的にあります。これらの地名の場所の共通点は谷が東西に伸びていて、谷の北側(南向きの斜面)が「日面」、南側(北向きの斜面)が「日影(陰)」であることです。もう、おわかりのように日当たりの良い悪いが地名になっています。 古い研究ですが、日面と日影のある丹生川村小八賀川の流域について、集落分布と日照時間の関係を調べたものがあります。(高橋百之:1949、地理学評論)。これによると、春分の日の日照時間は、日面斜面が10〜12時間であるのに対し、日影斜面は7〜8時間です。3〜4時間の差があるので、両斜面の雪消えの時間も異なります。つまり日面斜面の雪消えが4月7日だったのに対し、日影斜面は約1週間遅れました。この遅れは、雪の下に植えてあった大麦の成長量にかなりの差を生じさせました。 また全戸数443戸のうち日向側と日影側の配分は、234:109ですから、圧倒的に日向斜面に家が多く、ほとんどの家が春分の日の日当たり時間が12〜10時間の場所に分布しました。結果として、耕地も大半は日向斜面にあり、日影斜面はスギ林か雑木林となっていました。 現在の耕地や集落の分布は当時ほどはっきりしていないかもしれませんが、冬晴れの日に現地に立ってみると、日向と日影は地名になるほど顕著な違いであると納得しました。 飛騨地方のスキー場の斜面の向きも、雪が不足がちになるスキー場では多くが南向き斜面です。スキー場の立地条件としては、降雪量の多少以外に消雪時間も大きな要素です。他に北向き斜面と南向き斜面の違いは、山菜やキノコの分布にも影響しています。(中田 裕一) |