大野郡朝日村  ホーム 目次

氷点下の森


氷点下の森 

 2月になると、御岳のふもと、大野郡朝日村胡桃島の「氷点下の森」では氷祭りが開催されます。「氷点下の森」は、秋神温泉を経営する小林繁さんが昭和41(1966)年から作ってきたものです。この森は、冬季、樹木や鉄柱に散水して作ります。氷祭りも地域の行事として定着しました。夜になると、ハロゲン灯、水銀灯などで赤、緑、黄色などにライトアップします。氷のクリスタルにはろうそくの灯がともり、会場には美しい音楽が流れます。そして、幻想の世界を散歩できます。
 氷点下の森は、実際どの程度の気温環境でしょうか。森の標高は約1,000mあります。森の約2.5km下流の宮之前のアメダス観測所(標高約950m)のデータでは、たとえば1998年1月、2月の日々の最低気温は次のようです。1月は31日中1日、2月は28日中3日以外すべて氷点下でした。その中で、氷点下10度以上であった日は、1月2月とも各10日ありました。氷点下の森は、まさに氷点下の日々が続く中で完成することがわかります。
 1月、2月の岐阜県の平均気温の分布図を作成すると、飛騨の東部(朝日村宮之前、氷点下の森付近)と、西部(荘川村六厩付近)の2ヶ所に気温の低い部分があります。県境の山々の稜線や山頂部に観測所があれば、そこが最も気温の低い場所になるはずです。しかし、アメダス観測所のある人里で気温が低いのは、上記の飛騨東部と西部になります。
 氷点下の森で気温が低くなる理由は、第1に1000mという標高です。第2は、夜間の放射冷却による低温です。飛騨南東部に位置する氷点下の森では、案外雪は少なく夜間が晴天になる頻度が多くなります。晴天の夜間は、大地からの放射冷却がさかんになるためいっそう低温にはなります。(中田 裕一)