穏やかな晴天日のみやざき雲 |
漆山岳(1393m)にかかる宮崎雲(西漆山で) 雲は南(左)へ流れている |
「みやざき雲」は、穏やかな晴天日の夕方、漆山岳の峰に沿って北から南に流れる雲です。漆山では、「みやざき」とも呼んで親しんでいた雲で、いつ頃誰が名づけたかはわかりません。地元の西漆山では、この雲が山の南寄りの峰の下に入ると翌日も必ず晴れとなり、峰の上を越えれば雨となるといいます。アンケート調査によると、みやざき雲は、春より秋ころ、夕方4時か4時半ころに発生します。西漆山から見ると、雲は漆山岳の稜線に沿って細長い雲の橋のように見え、所々青空が透けています。 みやざき雲に関しては、漆山岳山頂での気温観測や神岡(約10km南方)のアメダスデータから次の推測をします。みやざき雲は、晴天日の飛騨山脈周辺の山谷風の日変化の中で発生します。山風は、夜間から午前中、山地が冷やされることによる冷気流で重いため谷の下方へ流れます。谷風は逆に、日中から午後、山地が暖められて発生する暖気流で谷の上方へ流れます。 午前中を中心に神岡付近では南寄りの山風が吹きます。神岡付近に北寄りの風(谷風)が侵入する午後、特に風速の大きくなる午後4時過ぎにみやざき雲が発生します。つまり、富山方面からの北寄り風は、漆山岳周辺で最初に1300m級の山地にぶつかります。そこで地形による気流の強制上昇でできた雲がみやざき雲です。 みやざき雲発生時、高気圧下で大気の安定度が高い(下降気流が卓越)ため、みやざき雲は、土地の人が言うように漆山岳を吹き越した後、南に流れ南方の山すそに下降して消えます。しかし同じ晴天日でも、大気がやや不安定(上昇気流が卓越)な場合は、漆山岳を吹き越した後、雲が下降せず南方の山向こうへ流れると思います。(中田 裕一) |