高山盆地から真正面に見える乗鞍岳は、3,026mの標高を有します。また乗鞍スカイラインで稜線へ自動車で行ける山として知られています。この乗鞍岳の山頂付近には、文部科学省の乗鞍コロナ観測所があり、1年を通して太陽コロナを観測しています。一方で観測所の気象データは、山岳の気象を知る上で貴重な観測資料となっています。
乗鞍コロナ観測所(標高2,827m)のデータから、夏山(7月〜9月)の気象を以下にまとめてみます。
8月上旬を中心とする盛夏期の1日の最高気温は、10度〜15度C前後であり、最低気温は5度から10度Cです。これは、東京でいえば3月下旬ころから4月上旬の気候です。実際、夏山の朝の10度Cをきる気温は、肌が震える寒さです。
梅雨明け以降の降水量は少なくなりますが、山麓の上宝村栃尾のデータと比較するとやや多くなります。風向は圧倒的に西風と北西風が多く、合わせて全体の8割を占めます。これは上空の風がもともと西寄りの風であることが多いためです。風速が10m/秒以上になるときは、90%以上が雨天時か霧に覆われたときです。10m/秒の風速は風上に向かって歩きにくい風速です。
午前9時の天気と午後3時の天気を比較すると、午前に晴れる日は30%ですが、午後晴れる日は10%程度しかありません。山岳では、晴天日であっても午後には曇ったり雲が多くなるといえます。夏の日射によって、暖めれた空気が午後には上昇気流となって雲になるためです。夕立が午後にあるのも同様の理由です。(中田 裕一)
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