ひだ・みの 活断層を訪ねて3  ホーム 目次

湯ヶ峰断層(上) マグマ熱で温泉わく


下呂温泉市街地から見あげる湯ヶ峰
 
下呂市下呂温泉の玄関口、JR下呂駅の喫茶店から東方を眺めると、山腹が大きく崩れた山が目に入る。この山は湯ヶ峰(一〇六七m)といい、れっきとした火山で約一〇万年前に噴火して、溶岩ドームをつくった。湯ヶ峰火山と呼ばれる。
 この山腹の崩壊している所に、湯ヶ峰断層が通っている。つまり、断層が活動するので、崩れがどんどん進んでいって現在のような凹地になってきたと考えられている。
 湯ヶ峰断層は、東濃から延びる阿寺断層系に属し、その北西に当たる。長さ約一〇キロメートルであり、下呂市御厩野から萩原に延びる。この断層は、人々と、特に下呂市民と非常に深い関わりを持っている。それは、火山と温泉である。
湯ヶ峰断層周囲の地下は、断層による岩盤の破壊が進み、地上から水がしみ込みやすくなっていると考えられる。この水は、地下のマグマをできやすくする働きがあり、また岩盤の割れ目は地下のマグマの上昇の出口となる。
 このようなしくみで、湯ヶ峰火山が断層の上に噴火した。また、このとき生じたマグマは地下ではまだ冷え切っていない。そのため今でも、地上からしみ込んだ地下水は熱せられ、水蒸気の圧力で温水が上昇し下呂温泉の元になっている。
 下呂温泉の湯治場としての発祥は天暦年間(今から千年以上前)と古く、無色透明八四度のアルカリ性単純泉であり、つるつるすべすべの湯は多くの湯治客を和ませ、健康を増進させている。
下呂温泉に来たときは、湯ヶ峰断層と湯ヶ峰火山を有する、文字通り「湯」の名を持つ湯ヶ峰を望みつつ、湯にひたりながらその恩恵に感謝したい。
 (岩田 修・飛騨地学研究会副会長)2004年10月30日