武儀川断層(下) 鞍部は道や峠に利用 |
武芸川町八幡から山県市美山町富永にかけて、武儀川断層によって形成された断層鞍部(ケルンコル、へっこんだ地形)が連なっている。断層鞍部は、断層によって岩石が破砕され、侵食を受けやすいため周囲よりも低くなったものである。 武芸川町八幡から小知野にかけては断層鞍部を利用して道路が通っている。断層鞍部は周囲よりくぼんでいるため、昔から山間地を通る道や峠として利用されてきた。こうした山間地の断層鞍部を通る道を、長野県木曽山脈東縁などでは、盗人(ぬすっと)道とよぶ。 最近でも新しい道路が建設された場所を詳しく見ると、断層の位置と一致している場合がある。断層は直線的に延びている場合が多く、さらに断層鞍部は周囲よりも低いため道路を建設するメリットが大きいためであろう。 写真は、盗人道のある断層鞍部である。右側(南)の丘は断層によって左側(北)の尾根から切り離され、断層丘陵(ケルンバット)となっている。道路は尾根と断層丘陵の間の断層鞍部(ケルンコル)を通っている。 武芸川町八幡の武芸川温泉は武儀川断層のすぐ脇に存在する。断層付近は、岩石が破砕されているため地下水の通り道となっている。地下深くなるほど温度は高いため(百bにつき約二〜三度)、地下水の温度も高い。こうしたことから、火山が近くにない地域で、新たな温泉を探す際には断層の位置を参考にすることが多い。 断層は、地震災害をもたらすのでマイナスイメージもあるが、一方で、平地や谷をつくり温泉をもたらす。日本列島を生じさせているのが断層ともいえる。断層を避けて生活することはできない。必要なのは、断層の活動履歴や性格をしっかり調査した上で、防災に役立て、利用することであろう。 (木澤慶和・飛騨地学研究会会員)2005年6月25日 |