三尾河断層(1) 100万年前近くかけ活動 |
冬の朝、飛騨の東西を結ぶ国道一五八号線を清見インター方面から西へ向かい、高山市荘川町三谷(さんたに)までくると、フロントガラスから朝日が射し込む。まばゆい朝日を背にして走って来たはずなのにと、とまどってしまう。 これは、南西へ向かっていた国道の道筋が、三尾河(みおご)断層の谷にぶつかり、「く」の字型に南東に折れ曲がっているからだ。(地図参照) この谷は、三尾河断層が百万年近くかけて活動した結果つくられたものである。北西〜南東方向の三尾河断層は、荘川断層帯(御母衣断層系)の南部分であり、北部分の白川断層(御母衣断層系)と同じく断層の向こう側が左へずれている。 また上下方向のずれをみると、断層の南西側が隆起(上昇)している。南西へ向かう国道は、隆起した断層の南西側の壁にとおせんぼされて、やむなく断層に沿う方向に曲げられたようにみえる。 道路が変な方向に曲がっていたり、直線的な谷にそってまっすぐ続くとき、そこに断層がある可能性が高い。 断層の真上、荘川町三尾河のマトバ橋から百bほど東に魚帰り滝がある。この滝をつくる岩盤は、数千万年前にマグマが固まった硬い岩石である。断層による岩盤の破壊は、この滝まで及んでいない。横幅が広く庄川の源流を落とすこの滝は、清涼感でいっぱいである。 三尾河から南の断層付近には、標高千二百bを超えるなだらかな地形のダナ高原があり、とても柔らかく甘い味のキャベツなど、高冷地野菜が栽培されている。三尾河断層は、近くの大原(おっぱら)断層とともに飛騨高地の代表的な断層といえる。 写真は、マトバ橋より三谷方面を見たものである。谷に沿う断層は手前より奥に続く。道路をたどり正面の山の稜線を見ると、断層上のくぼみ(わずかなへっこみ)が見受けられる。 (鷲見浩・飛騨地学研究会会員)2005年7月2日 |