江名古断層(上) 分水嶺山地を形成 |
江名子断層は高山盆地の南方、大西山地北側の山麓を北東から南西方向に分布する。高山市内からは分水嶺山地の断層崖を眺めることになる。 大西山地南側の山麓には、前回紹介した宮峠断層がほぼ平行に分布しており、この二つの断層に挟まれた地域が断層運動で隆起して分水嶺山地が誕生した。誕生以前、太古の宮川は、久々野町大西よりさらに南の御嶽山方面から日本海へ向かって流れていたが、大西山地一帯が隆起したため、せき止められて北方へ流れることができなくなった。その結果、太古の宮川上流は現在の飛騨川の最上流部になり、太平洋へ流れるようになった。 高山盆地は大西山地の隆起に関係して誕生した。江名子断層を境に大西山地側がより大きく隆起したが、高山盆地側の高度はあまり変わらなかった。つまり、断層北側の高山盆地は、沈降する傾向がなかったため、盆地内の堆積物は薄く、いたるところに岩盤が露出する底の浅い盆地になった。松本盆地のように沈降しながら堆積物を厚く堆積した盆地とは大きな違いである。一方、高山盆地の隣の飛騨一之宮盆地は、江名子断層と宮川断層の活動に関連して形成した断層盆地であり、盆地が沈降を伴っているため比較的厚い堆積物で埋まっている。 江名子断層は、高山市塩屋町東部から江名子町を通って飛騨一之宮へと延び、その延長距離は約十二`に達する。そして、この断層は、さらに南西の宮川断層から大原断層へと続く大きな断層帯を形成する。これらをまとめて江名子・大原断層帯と呼び、地震活動の可能性については今後五十年以内に五%以内の確率とされる。 江名子町南方にある大西山地北斜面は、断層崖(断層運動の累積でできた崖)が浸食された地形である。この斜面のふもと一帯では、断層運動に伴ういろいろな断層地形と地質現象を観察できる。 (鹿野勘次・飛騨地学研究会会員)2005年5月28日 |