ひだ・みの 活断層を訪ねて40  ホーム 目次

三尾河断層(4) ミズバショウの南限


山中峠のミズバショウ=高山市荘川町寺河戸
 
 山中峠は、高山市荘川町寺河戸(てらかわど)と郡上市明宝水沢上(みぞれ)との境にあり、峠の鞍部を三尾河(みおご)断層が通る。江戸期の飛騨国中案内によると、「寺河戸より水澤上村迄の間大峠にて四里の間難所なり」とあり、当時の難儀がしのばれる。山中峠は、飛騨の荘川では白山信仰の長滝寺まいりの道であり、美濃の明宝では白川の嘉念坊参りの道であった。(岐阜国道工事事務所)
 今は自動車道となった山中峠を登りきった所、庄川の源流に湿原がある。ちょうど三尾河断層の上にあるので、断層活動によるくぼ地に水が湧き出て、湿原になったことがわかる。
 二○○四(平成十六)年五月の飛騨地学研究会の巡検で、荘川方面から山中峠に来ると湿原に立て札があった。これによると、湿原は、一九六九(昭和四十四)年、「山中峠のミズバショウ群落」として、岐阜県天然記念物に指定された。選定理由として、日本における分布の南限であること、群生地のミズバショウの密度が高いこと、数少ない高原湿原であること、があげられていた。
 ミズバショウといえば、関東・東北境の高層湿原、尾瀬を歌った「夏の思い出」で有名である。ミズバショウは、本州の日本海側多雪地帯と北海道、およびオホーツク海南縁地域に分布し、雪溶け後の湿地に群落をつくる。白い花びらに見えるのは、密生する黄色の小さな花を取り巻く部分で、仏炎苞(ぶつえんほう)という。
 山中峠は、標高千三百四十b。岐阜県でも西部にあるので、冬の降雪はかなりだと察する。峠の間際まで、めいほうスキー場がせまっている。さらに断層上が湿原になった条件も加わり、日本最南端のミズバショウ群落をつくったのだろう。
 二○○五(平成十七)年五月始め、再び山中峠に立つと、大勢の人がミズバショウの見学に訪れていた。しばし、沼一面の白い可憐な姿にみとれ写真撮影に夢中になった。
 (中田裕一・飛騨地学研究会会員)2005年7月23日