養老断層(中) 多くの扇状地を生む |
養老断層は、少なくとも過去四千年の間に三回活動し、それぞれの活動に伴って約五bの上下変位を生じたと報告されている。一五八六(天生十三)年に濃尾平野に一帯に甚大な被害を与えた天正地震が最近の活動だという見解や、さらにもう一つ前の活動として七四五(天平十七)年の天平地震の可能性も報じられている。 養老断層は、活動を繰り返し山地を隆起させた。山地は侵食されるので、多量の土砂が流出してきた。そのため養老山麓には多くの扇状地が発達する。扇状地は、山地と平地の間に扇状に広がる堆積地形で、谷川の出口が扇頂(扇の要)、末端が扇端である。 扇状地の土砂は、水はけがよいため水田に適さない。そのかわりミカンやカキなどの果樹が栽培される。一方扇端では、扇状地にしみ込んだ地下水が湧水となり、水利が良いため集落が立地する。 扇状地の奥の急峻な山地には、孝子伝説で有名な養老の滝をはじめ、所々大小の滝が架かっている。「昔、貧しい若者の源丞内(げんじょうない)は、たき木取りに山へ行った。彼は、山中で谷底へ落ちて気を失った。目覚めると谷川に甘い香りがしたので、香りに誘われ上流に向かうと大きな滝があった。滝の水は酒であった。彼は、滝の水を汲んで帰り老父に飲ませた。すると、病だった老父はみるみる元気になった」以上が、孝子伝説のあらましである。 この滝は、山の中腹、巨岩・老樹に囲まれた養老公園の奥にある。高さ約三十b、幅四bの水流は、岩角を打ってとうとうと流れる。水は清く澄み、砕け散る飛沫(ひまつ)は霧のように立ち込めている。滝の水量・水質は、年間を通じてほとんど変わることなく、真夏でも肌寒さを感じさせる。 養老の滝を中心とした養老公園は以前から、春は桜、秋は紅葉の名所であったが、近年、天命反転地などの施設が整備され、四季を問わず多くの観光客が訪れて賑わっている。 (佐竹弘行・県高校地学教育研究会会員)2005年4月23日 |