ひだ・みの 活断層を訪ねて11  ホーム 目次

跡津川断層2 横綱級の横ずれ活動


跡津川断層崖。右側の体育館の建っている場所から左に続く崖にそって断層がある。
一九七七(昭和五二)年頃。=飛騨市宮川町野首
 
 跡津川断層は、断層をはさんだ両側の地面が横にすれ違ってずれ動く”横ずれ”と呼ばれるタイプで、断層の向こうが右にずれる。
 そのずれが何回も繰り返されることにより、直線状の谷地形を形成した。さらに、横ずれの大きさほどではないが上下方向のずれも加わり、各地に断層崖を形成した。断層崖とは、断層面が地表に現れてできた崖のことをいう。
 飛騨市宮川町野首の宮川中学校体育館のすぐ脇に、かつて高さ約五メートル、長さ約八○メートルの崖があった(写真)。
 以前から周囲の地形や、崖の続く方向、大きさなどから、跡津川断層の活動によって生じた断層崖であると考えられていた。今では国道三六○号線のバイパス工事によって、この断層崖はすべて削り取られ、当時の面影は全く無い。
 削り取られる以前の一九八二(昭和五七)年七月、この場所で跡津川断層の過去の活動状況を調べる目的で、活断層トレンチ調査が行われた。断層崖を横切る方向に重機を用いて大きな溝(トレンチ)を掘り、断層のずれの方向、ずれの大きさ、地層の年代などが調べられた。
 その結果、断層の平均の水平ずれは一○○○年あたり五メートルであることがわかった。したがって、この断層は横綱格のA級活断層(千年あたり平均一メートル以上ずれる断層)である。
 その後の研究結果も踏まえ、跡津川断層は、およそ二三○○〜二七○○年に一回の割合で活動し、それに伴い大地震を引き起こしてきたことが推定された。最近の活動は、一八五八(安政五)年の飛騨地震(飛越地震)であった。これが正しければ、跡津川断層が次に活動するのは二○○○年以上先の話になる。
 しかし、自然はそんなに規則正しく繰り返されるものではない。また、岐阜県は活断層の密集地帯であり、大地震への備えは常に必要である。
(寺門隆治・飛騨地学研究会会員)2004年12月25日