ひだ地学93号 2002年1月15日発行 ホーム 目次

飛騨国の火山・地震そして温泉

新ひだ風土記ー(その2)

下畑 五夫

 【第3話】  温泉風土記

〔T〕日本人と温泉の関わりは、神代の昔から 
    *最古の記述・・・・・「出雲風土記」733年
       玉造温泉に関して・・・・ 一濯則形容端正
 両浴則万病悉除
 自古至今無不得験
 故俗神日神湯也
   * 諏訪湖畔にある縄文遺跡(上諏訪駅付近)の縄文温泉?の発見

〔U〕「飛州志」・「斐太後風土記」の中の温泉
@「飛州志」に記載された温泉  
温 泉
・大洞温泉・和佐ノ温泉・下呂ノ温泉・宮ノ温泉・蒲田ノ温泉・平湯ノ温泉

A 「斐太後風土記」に記載された温泉             
   温 湯 温 口敦 湯 − ぬるきゆ  温 泉−いでゆ、俗に焼湯と称
・白山温湯   ・塩澤小温湯    ・小坂温泉
・平湯温湯 ・塩澤小温湯    ・宮村温泉
・山伏温湯   ・上野温泉
・蒲田温湯   ・乗政温泉
・湯迫温湯   ・和佐温泉
・濁河温湯
・下呂温湯
B温泉数の変化
「飛州志」時代―――――― 6ケ所
「斐太後風土記」時代――― 14ケ所

*{参考}下呂温泉と飛騨案内;昭和7年(1933年):久保太四郎著
   温泉と冷鉱泉として    29ヶ所
益田郡内:12ケ所(湯谷冷泉・和佐冷泉・乗政冷泉・下呂温泉・落合冷泉・
               桃原冷泉・下島冷泉・濁河温泉・赤ソブ温泉・塩本冷泉・
              塩澤温泉・池ヶ洞温泉)
大野郡内:8ケ所(天神湯・宮冷泉・上野冷泉・殿垣内冷泉・坊方冷泉・
             小木曽冷泉・六厩冷泉・大白川温泉)
吉城郡内:9ヶ所(畦畑冷泉・平湯温泉・山伏温泉・一重ケ根温泉・福地温泉
             蒲田温泉・中尾温泉・槍見温泉・穂高温泉)
C 泉温による区分
  「飛州志」時代―――――――――温泉
    「斐太後風土記」時代――――――温湯・温口敦湯・温泉
  「下呂温泉とひだ案内」時代―――温泉・冷鉱泉
   現代―――――――――――――冷鉱泉 ・ 低温泉 ・ 普通(温)泉 ・高温泉
D 泉質について
 @)「飛州志」の温泉の項に
   ――― 按ズルニ本土温泉湧出ノ地多其土地ニヨッテ各冷温剛柔アリトイエドモ
   「――― 濕瘡打身痔疾淋病瘡毒疝気金瘡等ヲ専治セリトミエタリ―――」
  ◇ 冷温剛柔
◇ 病気治療の効能に関心

〔V〕温泉を科学する  ◆ 温泉風土学の提唱 ・・・・『ひだ みの温泉風土記』
@温泉とはのくたい水?
  温泉の定義
◇ 普通の水とは異なった特殊な水。 熱的・化学的に特殊
◇ 温泉法(1948年・昭和23年)
◆ 癒し効果のある水・・・・温泉風土学
A 温泉の三要素
(@)泉温: 冷鉱泉<25℃≦ 低温泉<34℃≦普通泉(温泉)<42℃≦高温泉
(A)泉質:溶解成分(含まれている成分)によって分類される。
(B)湧出量

〔W〕飛騨の温泉
@ 「飛州志」・「斐太後風土記」の中の温泉
 小坂温泉――――二日酔いの妙薬 炭酸泉
  下呂温泉――――萬里集九・林羅山推薦の名湯
  蒲田温泉――――孝子伝説の高温泉
  平湯温泉――――白猿伝説の湯治場
  白山温泉――――秘湯中の秘湯

A従前からの温泉

焼岳周辺 平湯温泉群・新穂高温泉群 焼岳等 重曹泉単純泉 50〜96℃蒸気泉を伴う
白山周辺 大白川温泉 白山 含硫黄――食塩泉
御嶽周辺 濁河温泉 御嶽 重曹泉・硫酸塩泉 54℃
湯屋・下島温泉 断層 単純炭酸温泉 11〜14℃
下呂 下呂温泉 断層・
湯ヶ峰
単純泉〜単純硫黄泉
(アルカリ性泉)
50℃
乗政温泉 断層 炭酸泉 12℃
古川 気多温泉 * 炭酸泉鉄 18℃
高山 鹿の湯 * * *
高根 塩沢温泉 * 重曹―炭酸泉 40℃

B 新しい温泉(深いボーリングによる) 地温勾配:地表近くでは 3℃/100m
   高山市; 緑化土木の湯(平野屋他)・花扇・グリーンホテルなど
  国府町宇津江・古川町黒内・宮川村杉原・神岡町割石・流葉・ 丹生川村久手 宮村・荘川村 など

〔X〕これからの温泉とのつき合い  
@
             短期          時間           長期
    他律型  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          |行楽型                            |
          |                                |
          |      クワハウス型        温泉療法型   |
          |                                |
    自律型  |根拠地型                    湯治型   |
          −-−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        
     娯楽
     健康・知的な楽しみ方―――癒しの水

A 温泉風土記は癒し
 「郡家の西にある忌部の神戸というところは、出雲の国造が新年にあたって、大和朝廷に服従を誓い、天皇の御代を寿ぐ詞を奏上するために朝廷へ向かうとき、潔斎して身を清めるための地である。そのために忌部と呼ばれる。川辺に湯が湧き出し、海と山を望む景勝の地である。男も女も、老いたるも若きも、あるいは道につらなって、あるいは海浜に沿って、毎日集まり、市をなして、大勢がうちとけて酒を飲み、踊り歌いして楽しんでいる。その出湯に一度入ると、容姿が美しく立派になり、二度入れば全ての病が癒えてしまう。昔から今にいたるまで、その効能を得ないことはないとう。そのため、人々はこの湯を「神の湯」と呼んでいる。」