ひだ地学97号 2002年12月6日発行   ホーム 目次

気象学会中部支部・長野地方気象台合同
研究会に参加して

中田 裕一

 さる11月16日(土)、気象学会中部支部・長野地方気象台合同研究会に参加しました。場所は長野市の信州大学教育学部でした。2日目は写真部の引率の仕事があったため、1日目だけ参加しました。そこで自分は「飛騨山脈南部における夏山晴天日の局地循環」というテーマで発表しました。発表者は交通費がもらえます。
 発表者は、長野地方気象台の方が多く、他は、信州大学、東海大学、名古屋大学等の大学関係者が主です。気象台関係の方の発表は、長野県内の短期予報に関するものがほとんどでした。その多くは、気象レーダー、アメダス、力学モデル、数値モデル等を利用して、特殊な事例を検証するという内容です。一方、大学関係者の発表は、衛星データを利用したグローバルな範囲の内容が多いようでした。(グロバールスケールの発表は2日目の17日が多かったためあまり聞けませんでした。)そして、学校(小中高校)関係者は、自分以外に長野県の小学校の先生が発表しました。両方とも、現地観測データによる現象の解析でした。その中で、興味を持った発表の2、3を紹介します。
【平成14年7月15日の岡谷市の浸水】
 台風7号接近に伴う雨が長野県内でも観測されました。ところが、アメダスデータによる諏訪の降水量観測値では大雨が記録されていないのに、下諏訪町や近くの岡谷市で床下浸水や崖崩れなどの大雨被害があったという報告です。気象レーダーだけでは、局地的な降水を予報できない場合があるということでした。
【佐久地方における霧の発生状況の把握】
 佐久地方の霧は、放射霧以外に、碓氷峠からの滑昇霧(上昇気流)タイプ、佐久平からの滑昇霧(上昇気流)タイプがあるようです。霧は高速道路に影響があるので、3タイプの霧の季節的な頻度、気象状況を調べてありました。放射霧タイプは、深夜に山風が盆地に下降収束すると発生しますが、霧の上限が軽井沢測候所より低いと記録に残らないようです。
【冬季に吹走する「松本の南風」の特徴】
 この発表は、小学校の先生が信州大学の大学院で研究されたものです。冬型気圧型配置の頃、松本で飛騨山脈の地形効果による冷たい南風が吹くことはよく知られています。今回の発表では、気温低下から南風前線の北上の様子をとらえていました。ちょうど盆地霧が発生したとき南風(霧がない)が入った写真では、霧の境界が南風前線とはっきりわかりました。
 さて、自分の発表は、とにかく発表のおかげで図がいっぱいできました。また、飛騨山脈の熱的低気圧の気温上昇を観測できたことがわかりました。短い時間でしたが、発表後などにいろいろコメントをもらえました。