ひだ地学106号 2003 年5月12日発行 ホーム 目次

「竜馬石」のニ重紋に似た文様発見

岩田 修

竜馬石「二重紋の一例」
(1998年10月撮影)

泥の乾燥で生じた乾痕上の「二重紋」
(2003年4月13日、荘川村の御母衣
湖畔)
 1998年秋に飛騨地学研究会で巡検に出かけた、清見村せせらぎ街道の西ウレ峠(日本海と太平洋の分水嶺)近くにある竜馬石。これは竜ヶ峰安山岩からできている石の塊ですが、その表面に面白い文様ができています。四角形や五角形などの形のはっきりしない割れ目がたくさんできているだけでなく、その中にもう一つ模様ができているのがとても不思議でした。特に、四角い割れ目の中に丸い模様が並んでいるのを「連銭紋」と名付けられています。上の左写真は、まるで硯(すずり)のように見えます。
 このような二重紋はどのようにしてできたのでしょうか。伝説のように、天馬が石になったり、一部の人が想像したように古代人が彫ったとすると楽しい夢の世界です。しかし、風化による表面の割れ方によって生じたのです。それにしても、なぜ二重文様になったのか皆目見当がつきませんでした。
 それ以来、割れ目に関心をもって見てきました。岩やアスファルト、壁、茶碗、キリンの模様など・・・なかなか見つかりません。・・・苦節5年(?)、とうとう発見!。今春考古学の仲間と渇水期の御母衣湖畔(荘川桜のすぐ下)で石器等の採集の際、見つけたのが前項の写真です。泥水が乾燥してできる割れ目(乾痕)に二重紋ができていました。この乾痕の二重紋のでき方は、一旦水が引く状態が続く中で泥が集積し(中の模様)、その後一気に乾燥して外の大きな割れ目が作られたと考えました。
 安山岩の表面と乾痕とは条件が大きくちがうため、二重紋のでき方も異なるでしょう。しかし、同じような模様を発見できたことは大きな励みとなりました。自然は偉大な造形主です。この日は、縄文の石皿と打製石斧も採集でき、二重の喜びとなりました。
 この小文を見られた皆さん、割れ目の二重紋を探してみませんか。